【産経抄】

6月27日

2011.6.27 03:22

 北京-上海間の1318キロを4時間48分で結ぶ中国の高速鉄道が、まもなく開業する。7月1日の中国共産党創立90周年に間に合わせたものだ。開業式典は、国威発揚の絶好の舞台となる。ただ建設の陣頭指揮をとってきた劉志軍前鉄道相の姿はあるまい。

 ▼前鉄道相は、鉄道設備の入札にからみ、業者から巨額の賄賂を受け取った疑いで、今年2月に解任されている。「世界一」にこだわるあまり、安全性を無視して最高時速を350キロに設定するよう指示していたことも、元部下によって暴露された。

 ▼今から47年前の昭和39年10月1日に開通した東海道新幹線の出発式典にも、本来は主役であるはずの十河信二と島秀雄の姿はなかった。といっても2人は、汚職とはまったく無縁である。

  ▼十河が第4代国鉄総裁に就任した昭和30年頃は、車社会の到来に伴う「鉄道斜陽論」が大勢を占めていた。そんななか十河は、国鉄内でも反対の声が強かっ た「夢の超特急」の実現に邁進(まいしん)していく。すでに国鉄を退職していた天才技術者の島を呼び戻して、新幹線建設の指揮を任せた。自らは政治の圧力 と闘い、資金集めに奔走する。

 ▼しかし開業の1年前、建設資金不足が発覚して、辞任を余儀なくされた。島も十河に殉じて辞表をたたきつけ たというわけだ。新幹線は、その後の日本の経済発展を支え、開業以来乗客が死亡する事故を起こしていない、「安全神話」を今なお保っている。「生みの親」 として2人を顕彰する物語も数多く語られてきた。

 ▼中国版新幹線はどうだろう。日本から技術供与を受けながら、車両の技術特許を米国で申請する、との報道があったばかりだ。物語は早くも中国らしい展開を見せている。

 

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