星の王子さま~LE PETIT PRINCE~

by Antoine de Saint-Exupery

 

日ごとに、ぼくは、王子さまの星のことや、王子さまが、その星を出てきた時のことや、それからの旅のことなどを、なんということもなく知るようになりました。

いきあたりばったり考えているうちに、しぜん、話がわかってきたのです。

そんなわけで、ぼくは三日めに、おそろしいバオバブの話をききました。

そういうことになったのも、やっぱりヒツジのおかげでした。

というのは、王子さまが、ひどく心配そうな顔をして、やぶから棒に、こう、ぼくにきいたからです。

-ヒツジが小さい木をたべるって、ほんとだね?

-うん、ほんとだ

-ああ、そうか、うれしいなあ

ヒツジが小さい木をたべることが、なんでそうだいじなのか、ぼくにはわかりません。

でも、王子さまは、つづけていいました。

-なら、バオバブもたべるんだね?

バオバブは小さい木じゃない、教会堂のように大きな木だ、王子さまがゾウの一部隊をつれていっても、たった一本のバオバブの木もたべきれない、と、ぼくは王子さまにいいました。

王子さまは笑いました。ゾウの一部隊といったのが、おかしかったのです。

            

-ゾウだと、かさねなくっちゃ、ね・・・・・・

それから、分別くさそうにいいました。

-大きなバオバブも、はじめは小さかったんだよ

-そのとおりだ。でも、なぜ、小さいバオバブなんかたべさせたいの、ヒツジに?

-わからないかなあ、そのわけ!

と王子さまは、さもわかりきったことのように、いいました。

だからぼくは、うんと頭をひねって、ひとりでそのわけを考えなければなりませんでした。

そのわけはこうでした。

王子さまの星には、およそ星なら、どの星もそうであるように、いい草と、わるい草とがありました。

ですから、いい草のいい種と、わるい草のわるい種とがありました。

でも、その種は目に見えません。地面の、どこかふかいところに眠っていると、そのうちに、種のどれか一つが、ふと、目をさます気になるのです。

それから、目をさました種は、背のびします。

そして、美しい、あどけない茎を、日の光のほうへ、はじめはオズオズとのばします。

赤カブや、バラの木だったら、のびほうだいに、のばしておいてよろしい。

だけれど、わるい草木だったら、それが、目につきしだい、すぐに抜きとってしまわなければなりません。

さて、王子さまの星には、おそろしい種がありました・・・・・・。バオバブの種がありました。

そして、星の地面は、その種の毒気にあてられていました。

バオバブというものは、早く追いはらわないと、もう、どうしても、根だやしするわけにゆかなくなるものです。

星の上いちめんに、はびこります。その根で、星を突き通します。

星が小さすぎて、バオバブがあまりたくさんありすぎると、そのために、星が破裂してしまいます。

王子さまは、もっとあとになって、ぼくにこういいました。

-きちょうめんにやればいいことだよ。朝のおけしょうがすんだら、念入りに、星のおけしょうしなくちゃいけない。

バオバブの小さいのは、バラの木とそっくりなんだから、見わけがつくようになったら、さっそく、一つのこさず、ひっこぬかなけりゃいけない。

とてもめんどくさい仕事だけど、なに、ぞうさもないよ

ある日、王子さまは、フランスの子どもたちが、このことをよく頭にいれておくように、ふんぱつして、一つ、りっぱな絵をかかないかとぼくにすすめました。

-きみの国の子どもたちが、いつか旅行するとき、役にたつかもしれないからね。

仕事をあとにのばしたからといって、さしつかえのないこともあるさ。

だけど、バオバブはほうり出しておくと、きっと、とんださいなんになるんだ。

ぼくは、なまけものがひとり住んでた星を知っているけどね。

その人は、まだ小さいからといって、バオバブの木を三本ほうりっぱなしにしておいたものだから・・・・・・

ぼくは、王子さまに教えてもらって、その星の絵をかきました。

口はばったいことをいうのは、ぼく、きらいです。

しかし、バオバブのけんのんなことは、ほとんど知られていませんし、星の世界で道に迷うような人がいたら、その人はとても大きい危険に出くわすことになります。

ですから、ぼくは、一度だけ日ごろのえんりょをぬきにして、こういいましょう。

<おーい、みんな、バオバブに気をつけるんだぞ!>

ぼくがここにバオバブの絵をかいたのも、ぼくの友人たちが、ぼくと同じように、もう長いこと、知らないで危ないめにあいかけているので、気をつけるんだよ!といいたいためです。

ぼくはこの絵を、たいへん苦労してかきました。それでも、この教訓がむだにならないようでしたら、ぼくは満足です。

どうかすると、きみたちは、

<この本たら、このバオバブの絵ばかり、へんにすばらしくて、どうしてほかの絵は、りっぱでないのか>

とふしぎに思うでしょう。 

その答えは、たいへんかんたんです。やってはみたのですが、うまくゆかなかったのです。

なにしろ、バオバブをかいた時は、ぐずぐずしてはいられないと、一生けんめいになっていたものですから。

 

http://homepage2.nifty.com/tomatoworld1/prince5.htm

 

 

王子さま、あなたは、はればれしない日々を送ってこられたようだが、ぼくには、そのわけが、だんだんとわかってきました。

ながいこと、あなたの気が晴れるのは、しずかな入り日のころだけだったのですね。

ぼくは四日めの朝、あなたが、ぼくにこういったとき、この、いままで知らずにいたことを知ったのです。

-ぼくね、日の暮れるころが、だいすきなんだよ。きみ、日の沈むとこ、ながめにいこうよ・・・・・・

-でも、待たなくちゃ・・・・・

-待つって、なにをさ

-日が沈むまで待つのさ

ぼくがこういうと、あなたは最初、たいへんおどろいたようすをしましたね。

でも、やがて、じぶんでじぶんがおかしくなって、あなたは、こういいましたね。

-ぼく、いつも、じぶんのうちにいるような気ばかりしてるんだ

           

それにちがいありません。アメリカ合衆国で昼の十二時のときは、だれも知っているように、フランスでは、日没です。

ですから、一分間で、フランスにいけさえしたら、日の入りが、ちゃーんと見られるわけです。

でも、それには、あいにくフランスが、あんまり遠すぎます。

だけれど、あなたのちっぽけな星だったら、すわっているいすを、ほんのちょっと動かすだけで、見たいと思うたびごとに、夕やけの空が見られるわけです。

-ぼく、いつか、日の入りを四十四度も見たっけ

そして、すこしたって、あなたは、また、こうもいいましたね。

-だって・・・・・・かなしいときって、入り日がすきになるものだろ・・・・・・

-いちにちに四十四度も入り日をながめるなんて、あんたは、ずいぶんかなしかったんだね?

しかし、王子さまは、なんともいいませんでした。

 

http://homepage2.nifty.com/tomatoworld1/prince6.htm

 

 

 

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