星の王子さま~LE PETIT PRINCE~

by Antoine de Saint-Exupery

 

 

(いっ)(か)目に、やはりヒツジのおかげで、ぼくは、王子(おうじ)さまのもっている秘密(ひみつ)がわかりました。

(なが)いあいだ、だまって(かんが)えていた問題(もんだい)から、質問(しつもん)がうまれたように、王子(おうじ)さまは、だしぬけに、こう、ぼくにききました。

 

-  ヒツジは、(ちい)さい(き)をたべるんだったら、(はな)もたべるんだろうね?

 

-  いきあたりばったり、なんでもたべるよ

 

-  トゲのある(はな)も?

 

-  そう、トゲのある(はな)

 

-  じゃ、トゲは、いったい、なんの(やく)にたつの?

 

それは、ぼくの(し)らないことでした。

ぼくはその(とき)、モーターのボールトが、あまりしまりすぎているので、それをはずそうと、懸命(けんめい)になっていました。

 

ちょっとやそっとでは、パンクがなおりそうもないので、(き)(き)ではありませんでした。

それに、(の)(みず)(そこ)をついていて、(て)(あし)もでないことになりそうだったのです。

 

-  トゲは、いったい、なんの(やく)にたつの?

 

王子(おうじ)さまは、いちど、なにかききだすと、あいてが返事(へんじ)するまであきらめません。

ぼくは、ボールトのことで、(き)がいらいらしていたので、なんでもかまわず、でたらめに(こた)えました。

 

-  なんの(えき)にもたちゃあしないよ。(はな)はいじわるしたいから、トゲなんかつけてるんだ

 

-  へえ!

 

だけれど、ちょっとだまっていてから、王子(おうじ)さまは、うらめしそうに、こういいかえしました。

 

-  うそだよ、そんなこと!(はな)はよわいんだ。むじゃきなんだ。

できるだけ心配(しんぱい)のないようにしてるんだ。トゲをじぶんたちの、おそろしい武器(ぶき)だと(おも)ってるんだ

 

ぼくは、なにも(こた)えませんでした。ぼくは、そのとき、

 

<このボールトが、いうことをきかなけりゃあ、カナヅチでぶっとばそう>

(かんが)えていました。すると、王子(おうじ)さまは、また、ぼくの(かんが)えをじゃましました。

 

-  だのに、きみは、ほんとうにそう(おも)ってるんだね?(はな)ってものは・・・・・・

 

-  ちがうよ、ちがうよ、ぼく、なんとも(おも)ってやしないよ。でたらめに返事(へんじ)したんだ。とてもだいじなことが、(あたま)にひっかかってるんでね

 

-  なに、だいじなことって?

 

王子(おうじ)さまは、ぼくを(み)ました。

 

ぼくは、王子(おうじ)さまにとってはたいそうきたなく(み)えるものの(うえ)にかがみこみながら、カナヅチを(て)(も)って、機械(きかい)あぶらで(ゆび)をまっ(くろ)にしていたのです。

 

-  まるで、おとなみたいな(くち)のききようをする(ひと)だな!

 

そういわれて、ぼくは、すこしはずかしくなりました。しかし、あいては、それにかまわず、こうつづけました。

 

-  きみは、なにもかも、ごちゃまぜにしてるよ・・・・・・まぜこぜにしてるよ・・・・・・

 

王子(おうじ)さまは、こんどは、ほんとうに(はら)をたてていました。

そして、(め)のさめるような金色(こんじき)(かみ)を、(かぜ)にゆすっていいました。

 

-  ぼくの(し)ってるある(ほし)に、赤黒(あかくろ)っていう先生(せんせい)がいてね、その先生(せんせい)(はな)のにおいなんか、(す)ったこともないし、(ほし)をながめたこともない。

だあれも(あい)したことがなくて、していることといったら、(よ)(ざん)ばかりだ。

 

そして(ひ)がな一日(いちじつ)、きみみたいに、いそがしい、いそがしい、と(くち)ぐせにいいながら、いばりくさっているんだ。そりゃ、ひとじゃなくて、キノコなんだ

 

-  キノ・・・・・・?

 

-  キノコなんだ

王子(おうじ)さまは、もうまっさおになっておこっていました。

 

-  (はな)は、もう何百年(なんびゃくねん)(まえ)から、トゲをつくってる。ヒツジもやっぱり、もうなん百年(ひゃくねん)(まえ)から、(はな)をたべてる。

 

でも、(はな)が、なぜ、さんざ苦労(くろう)して、なんの(えき)にもたたないトゲをつくるのか、そのわけを(し)ろうというのが、だいじなことじゃないっていうのかい?

(はな)がヒツジにくわれることなんか、たいしたことじゃないっていうの?

ふとっちょの赤黒(あかくろ)先生(せんせい)(よ)(ざん)より、だいじなことじゃないっていうの?

 

ぼくの(ほし)には、よそだとどこにもない、めずらしい(はな)(ひと)つあってね、ある(あさ)

(ちい)さなヒツジが、うっかり、パクッとくっちまうようなことがあるってこと、

ぼくが  このぼくが   (し)ってるのに、

 

きみ、それがだいじなことじゃないっていうの?

 

王子(おうじ)さまは、そういって、こんどは、(かお)(あか)くしましたが、やがてまた、いいつづけました。

 

-  だれかが、なん百万(ひゃくまん)もの(ほし)のどれかに(さ)いている、たった一輪(いちりん)(はな)がすきだったら、その人は、そのたくさんの(ほし)をながめるだけで、しあわせになれるんだ。

 

そして、 <ぼくのすきな(はな)が、どこかにある>(おも)っているんだ。

それで、ヒツジがその(はな)をくうのは、その(ひと)(ほし)という(ほし)が、とつぜん(け)えてなくなるようなものなんだけど、それもきみは、たいしたことじゃないっていうんだ

 

王子(おうじ)さまは、それきり、なにもいえませんでした。そして、にわかに、わっと(な)(だ)してしまいました。

 

ぼくは、しごと道具(どうぐ)(て)ばなしていました。カナヅチも、ボールトも、(め)にうつらなかったし、

のどがかわいても、(し)(おも)いをしても、そんなことは、どうでもよいことでした。

ひとりの王子(おうじ)さまを、(ひと)つの(ほし) といっても、ぼくの地球(ちきゅう)(うえ)で、なんとかして、なぐさめなければならなかったのです。

 

ぼくは、王子(おうじ)さまをしっかりだいて、しずかにゆすりながら、

 

-     あんたのすきな(はな)、だいじょうぶだよ・・・・・・・あんたのヒツジには、口輪(くちわ)をかいてやる・・・・・・あんたの(はな)には、かこいの(え)をかいてあげる・・・・・・ぼくは・・・・・・

 

と、いいはしましたが、なんといっていいか、わかりませんでした。

 

ものをいうにも、へたくそで、うまくいえなかったのです。

 

どうしたら、王子(おうじ)さまの気もちになれるのか、どこで王子(おうじ)さまの(き)もちと、いっしょになれるのか、それもわかりませんでした・・・・・・

 

(なみだ)(くに)って、ほんとにふしぎなところですね。

 

http://homepage2.nifty.com/tomatoworld1/prince7.htm

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