唐沢:まるで 昨日のことのようでございます。
唐沢:本当に ご立派になられて。
唐沢:受け取ってください。
唐沢:後は頼みましたよ 影山君。
電話:風祭警部 国立1丁目 コーポ国立で殺しです。
风祭:分かった すぐに行く。
风祭:ウップス。
警察A:ガイ者の部屋 かなり散らかってますが
警察A:金品を物色された形跡は ありません。
警察?:ご苦労さまです。
宝生:おはようございます。
宝生:はい 宝生です あの すみません… えっ?
宝生:はい 分かりました。
宝生:えっ? ハンカチですか?
风祭:そう ホワイツ。
风祭:うん 僕のハートを 撃ち抜いた犯人は どっちかな?
警察?:風祭警部。
警察?:そろそろ決めてください。
风祭:迷宮入りだ。
宝生:あっ このお弁当 賞味期限 切れてますよ。
路人A:えっ? あら やだ。 ねえ。
コンビに店員:いらっしゃいませ。
警察A:現場が散らかってるのは ガイ者の生活習慣が
警察A:ちょっと こう 乱れてたのかな… あっ。
警察A:ご苦労さまです。 現場は こちらです。
风祭:はい はい はい はい はい。
宝生:遅くなりました。
风祭:やあ やっと来たね お嬢さん。
风祭:どっかで迷子になったのかと 思って心配したよ。
宝生:あの お嬢さんは やめていただけますか?
宝生:みんなが まねしますから。
警察A:あっ お嬢ちゃん。
警察B:お嬢。 あっ キャバ嬢。
宝生:キャバ嬢じゃないですから。
风祭:ありがとう。
宝生:どうしたんですか? 急に買ってきてなんて。
风祭:チーフを忘れてしまってね。
风祭:今 執事が交代する時期で ばたばたしていて。 はい。
风祭:あれ? これ滑りが良くないね シルクじゃないのかい?
宝生:じゃ 自分で買えよ
宝生:いえ。
宝生:風祭警部は 中堅自動車メーカー 風祭モータースの御曹司
风祭:年商? 500億ちょい?
宝生:それでいて なぜか 国立署の警部でもある
宝生:で 何で警察官になったのか
风祭:御曹司で警部?
风祭:そりゃ確かに異例ですけど
风祭:本当はプロ野球の選手に なりたかったんだけどね
宝生:答えになってない答えが 返ってきたので
宝生:それ以上 聞くのは やめた
宝生:とにかく私は この人が苦手である
宝生:本人は うすうすも 気付いてなさそうだけど
风祭:被害者は この部屋に住む 吉本 瞳という
风祭:25歳の派遣社員だ。
风祭:見てきてごらん。
宝生:出血は なし
宝生:死因は絞殺?
宝生:だけど この死体 何かが おかしい
宝生:部屋の中でブーツ? 何で
旁白:殺人現場では靴をお脱ぎください
警察A:死亡推定時刻は 昨日の午後6時前後です。
警察B:死因は首を絞められての窒息死。
警察B:凶器は細いロープのような物だと きゅっ
警察B:推測されます。
风祭:ああ まったく恐ろしいやつだな
风祭:僕って男は。
みんな:はい?
风祭:実は この現場を見た瞬間に
风祭:犯人が誰か 絞りこむことができてしまった。
宝生:何かに気付かれたと。
风祭:はい。
风祭:例えば帰宅した被害者が 何者かの襲撃を受けたとしよう。
风祭:被害者は必死で抵抗したが 力 及ばず
风祭:ついに 犯人の手によって絞め殺された。
风祭:そういうストーリーが思い浮かぶ。
风祭:だが 見たまえ 宝生君。
风祭:玄関から部屋の床に至るまで 足跡1つ見当たらない。
风祭:被害者は ブーツを履いているというのに。
风祭:この状況は おかしいとは思わないかね。
宝生:確かに おっしゃるとおりですね。
宝生:それくらい 誰でも気付くでしょ
风祭:つまり 被害者は別の場所で殺されて
风祭:この部屋に運ばれてきた。
风祭:そして犯人は靴を玄関で脱ぎ
风祭:遺体を担いで この部屋に置いた。
风祭:なら容疑者は一気に絞られる。
风祭:そう 犯人は男だ。
宝生:小学生でも思い付く推理を よくも決めポーズ付きで
风祭:ああ そうそう 君にも 分かりやすく補足してあげると
风祭:女が死体を担いで運んでいくのは
风祭:無理だからってことだけどね。
宝生:ですが警部。
宝生:んっ?
宝生:女性でも 2人組であれば運べるのでは。
风祭:言われるまでもない。 僕も その可能性を考えていたさ。
宝生:今 言われて 初めて考えたでしょ
宝生:この絶対勝ち組男が
风祭:どうしたのかね? 宝生君。
宝生:いえ さすがです警部。
宝生:それにしても ずいぶん散らかった部屋ですね。
风祭:はい はい はい はい はい。
风祭:見たまえ 宝生君。
风祭:凶器は細いロープだったね。
风祭:ということは。
宝生:ちょっと待ってください。
宝生:ロープで殺害後
宝生:わざわざ犯人は ロープをベランダに張って
宝生:洗濯物をつるした なんて 言いだす気じゃないですよね。
风祭:まさか 誰が そんな想像を。
宝生:ほかでもない あなたが
警察A:警部 こんな物が。
风祭:被害者には 交際している男性がいたようだ。
宝生:それに この鍵 この部屋の物じゃありません。
宝生:この部屋のは ピッキングできないような
宝生:最新式の物ですから。
风祭:ならば男の部屋の合鍵か。
风祭:これは面白い。
宝生:恋愛感情のもつれは 殺人の動機になりやすいですからね。
风祭:うん じゃ そろそろ 事情聴取といこうか。
宝生:はい。
宝生:今回の事件 案外 難しいかも
宝生:しかも捜査の指揮を執るのが 風祭警部では
宝生:迷宮入りのにおいが ぷんぷんする。
风祭:送ってこうか お嬢さん。
宝生:あっ いえ 大丈夫です。
风祭:今のサインは 『ア?イ?シ?テ?ル』じゃなくて
风祭:『ま?た?あ?し?た』 って意味だからね
宝生:ヤバ。
宝生:ごめんなさい。 修理代は お幾らくらい?
影山:7080万程度でしょう。
影山:ほんの かすり傷ですよ。
影山:お嬢さま。
宝生:もう びっくりさせないでよ
宝生:他人の車かと思ったじゃない。
影山:失礼いたしました。
宝生:あなたが唐沢の後任?
影山:はい 影山と申します。
影山:そろそろご帰還されるころかと 思いまして
影山:お迎えにあがりました。
宝生:勘がいいのね 影山。 刑事になれるかもよ。
影山:とんでもございません。 私は執事。
影山:お嬢さまのような 才覚あふれた高貴なお方とは
影山:比べ物になりません。
影山:刑事など とても とても。
宝生:お上手ね。
宝生:影山 私 一眠りするから 適当に1時間ぐらい走らせて。
影山:かしこまりました。
宝生:そう 私は お嬢さんでも お嬢ちゃんでも
宝生:ましてやキャバ嬢でもない
宝生:金融からエレクトロニクス
宝生:さらには医薬品 出版まで手掛ける
宝生:世界有数の財閥
宝生:宝生グループ
宝生:私は その総帥 宝生 清太郎の一人娘
宝生:つまり正真正銘のお嬢さま
宝生:さすが 唐沢が選んだだけのことあるわね。
宝生:さっき会ったばっかりなのに 私の好みが よく分かってる。
影山:恐れ入ります。 ただ 一言 申し上げるならば
影山:初めてお会いしたのは 今日のお昼でございます。
宝生:お昼。
影山:ええ
影山:お嬢さまが殺人現場のベランダに いらっしゃるときに。
宝生:ベランダ。
宝生:あっ 影山 あなた何やってるのよ。
影山:お嬢さまを 見守っていただけでございます。
宝生:見守る?
影山:お嬢さま われわれ執事の 最大の使命は何だか
影山:ご存じでらっしゃいますか?
宝生:何よ 急に。
宝生:そりゃ こういうお食事を 用意したりとか
宝生:ワインを選んだりとか?
影山:それも もちろん 大切な役目でございます。
影山:しかし最も大切なのは。
影山:あるじであるお嬢さまを守ること。
影山:そのために 私は
影山:常にお嬢さまを 見守っているのでございます。
宝生:でも事件現場まで来るのは。
影山:もう旦那さまも 大層 心配しておいでです。
宝生:お父さまが?
影山:今ごろ 凶悪犯と銃撃戦になっていないか。
影山:今ごろ 身代金の入ったかばんを手に
影山:国立の市街地を 駆け回ってはいないか。
影山:今ごろ 府中街道で
影山:カーチェイスの 真っ最中ではないか。
影山:それは もう 仕事も 手に付かないほどのご心配ぶり。
宝生:どうせママと 海外を旅行してるだけでしょ。
宝生:大丈夫だから安心してって 言っておいて。
影山:かしこまりました。 ただ これは唐沢さんから
影山:責任を持って引き継いだ 仕事でもあります。
宝生:引き継いだ? 唐沢も私のこと つけてたってこと?
影山:はい。
宝生:いつから。
影山:それは もちろん 生まれたときから
影山:ずっとでございます。
宝生:嘘でしょ?