星の王子さま~LE PETIT PRINCE~

by Antoine de Saint-Exupery

 

 

渡り鳥たちが、ほかの星に移り住むのをみた王子さまは、いい折だと思って、ふるさとの星をあとにしたのだとぼくは思います。

 

出発の日の朝、王子さまは、じぶんの星を、きちんと整理しました。

念入りに活火山のすすはらいをしました。そういえば王子さまは、活火山を、二つ持っていました。

 

ですから、朝の食事をあたためるには、たいそうべんりでした。

休火山も一つ持っていました。しかし、王子さまもいっていましたとおり、それが、まったく爆発しないとはかぎらないのです。だから、王子さまは、休火山のすすはらいもしました。

火山というものは、よくすすはらいしておきさえすれば、爆発なんかしないで、しずかに規則ただしく煙をはくものなのです。火山の爆発は、煙突の火とかわりありません。

 

この地球の上では、ぼくたち人間が、あんまり小さくて、火山のすすはらいするわけにはいかないことは、いうまでもありません。だから、ぼくたちは、火山の爆発のために、さんざ、なやまされるのです。

 

王子さまは、つい、このごろ生えたバオバブの芽を、どこか顔をくもらせて、ぬきとりました。

もう、二度と帰ってこないつもりだったのです。

いつもするそんな仕事も、その朝は、ほんとに身にしみました。

そして、わかれのしるしに、花に水をかけて、覆いガラスを、かけてやろうとしていると、王子さまは、いまにも涙がこぼれそうになりました。

 

- さよなら

 

と、王子さまは花にいいました。

しかし、花はなんともいいません。

 

- さよなら

 

と、王子さまはくりかえしました。

花は、せきをしました。でも、かぜをひいているからではありませんでした。

 

- あたくし、ばかでした

 

と、花は、やっと、王子さまにいいました。

 

- ごめんなさい。おしあわせでね・・・・・・

 

王子さまは、花がちっともとがめるようなことをいわないので、おどろきました。

そして、覆いガラスを空に向けたまま、すっかりめんくらって、じっと立っていました。

花がどうして、こうおとなしくしているのか、わけがわかりませんでした。

 

- そりゃ、もう、あたくし、あなたがすきなんです。

あなたがそれを、ちっとも知らなかったのは、あたくしがわるかったんです。

でも、そんなこと、どうでもいいことですわ。

あたくしもそうでしたけど、あなたもやっぱり、おばかさんだったのよ。

おしあわせでね・・・・・・もう、その覆いガラスなんか、いりませんわ

 

- でも、風が吹いてきたら・・・・・・

 

- あたくしのかぜ、たいしたかぜじゃありませんもの・・・・・・夜の涼しい風に吹かれたら、さっぱりしますわ・・・・・・花なんですもの

 

- でも、けものが・・・・・・

 

- あたくし、チョウチョウのお友だちになりたかったら、二匹や三匹のケムシはがまんしなくちゃあね。

チョウチョウって、なんだか、たいそう美しそうですわ。

チョウチョウでなくて、だれが、あたくしをたずねにきてくれるでしょう。あなたは、遠くにいっておしまいですからね。

大きなけもののことだったら、ちっともこわかないわ。あたくしだって、爪はもっているんだから

 

花は、そういって四つのトゲを、むじゃきに見せたあと、こうつけ加えました。

 

- そう、ぐずぐずなさるなんて、じれったいわ。

もうよそへいくことにおきめになったんだから、いっておしまいなさい、さっさと!

 

花がそういったのは、泣いている顔を、王子さまに見せたくなかったからでした。

それほど、弱みを見せるのがきらいな花でした。

 

http://homepage2.nifty.com/tomatoworld1/prince9.htm

 

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